チクタクチクタク

草木も眠る丑三時。
物音はちょっと型落ちしかけたノートパソコンの駆動音だけ。


明日は面接。結構志望度高いわけだけど。
自信はあまりもてなかったりする。


まぁそもそも自分に自信なんかもてないわけだけど。
普段人と接している分には、そうそう否定なんかされないから堂々とふるまえる。

でも、いざ評価される段になってみると、どうだろう。
空っぽの自分に気付く。

ファンファン煩い駆動音。
僕も負けじと溜息をつく。ハァ…ハァ。

チックタックチックタック。
そんな停滞を切り裂いて、さらにもひとつ物音が加わる。
チックタック。チックタック。
傍らに置いた腕時計。

チックタックチックタック。
父から貰った時計は僕の不安なんてものともせずに(あるいはそれを煽るように)時を刻む。


チックチックチックチック…

思えばこの時計とは十年近く付き合っている。
そんな(今の僕にとっては果てしない)時間を経ても、変わったようには見えない。
彼を巻く僕の腕は初めて巻いた時よりもずっと太くなってるっていうのに。


時計ってやつは、いつもいつだってチクタクチクタク煩くて、「几帳面な奴だなぁ」とか「毎日毎日チクタクしかしないで面白いんだろうか(反語)」とか辟易したりすることもある。
だけど、彼のあまりの変わらなさを見るに、時計ってやつの時間は案外人よりも大らかに流れているのかもしれないのかなぁとか、ふと思った。

はじめて手にした日からずっと変わってない彼の貌が、「お前もいつもの調子でいいんだよ」とか言ってくれてるような気がしてきた。馬鹿みたいな気休めだけど、今の僕にはそれがとても有難かった。

……ありがとう。明日も頼むよ、相棒。