たまきち

御緩漫玉日記 3巻 (Beam comix)

御緩漫玉日記 3巻 (Beam comix)

ひどい漫画だ。
とてつもなく暗く、重い。
話には脈絡は無く、昔の女性関係の話が続いたと思ったら尻切れトンボで少年時代に飛びそれも尻切れでオーディオケーブルは光より同軸が〜なんて展開。
2巻の時点で食傷気味であった編集長いぢりはもはや強迫観念に駆られているのではないかと思しき執拗さである。

もはや漫画の体を為していない。
こんな漫画読んで誰が楽しいんだろう。

しかし、

それでも、この漫画はすごい。
そう云わざるを得ない。

漫画を『描く』事でしか生きることができない男が自らの日常や過去(そして内包される緩やかな絶望を、諦念)を描く。描き付ける。筆で、墨で、太く、濃く。
『人間/「私」/近代的自我を描く』事を目標としてきたのが近現代文学であるならば、この作品もそれらに比肩し得る濃度/密度を持って「私」を描いている筈である。

詰まり、この作品は漫画であると同時に(絵(とネーム)によって描かれた)文学である、ということである。のだ。




何度もいうけど、本当に暗くて、重くて、たまにやけっぱちに明るかったりして読んでられなかったりするけど引き付けられちゃうのだ。
それは桜玉吉というひとりの男がまさに『その身を削って』原稿に擦り付けているような緊張感を孕んでいるからだろう。
中途半端に終わるのはいつもの事だけど、ゆっくり休んでまた帰ってきて欲しい漫画家のひとりだ。