ボーン・スプレマシー

ジェイソン・ボーンはカッコイイ。
何故なら、彼は悩まないからだ。彼は行動し続ける。彼は知っているからだ。立ち止まれば終りだという事を、自らに状況を切り開く力が備わっている事を。


思えば僕らの世代でいう『ヒーロー』は常に苦悩と共にあった。
BLACKは親友を殺し、シュラク隊は全滅し、師匠は死に、カトルは精神崩壊し、気がつけば『エヴァンゲリオン』が始まっていた。
『ヒーロー』と『ヘタレ』は似たようなものだった。
そんな弱虫野郎が、力を手に入れ、悩みながら成長していく。
僕にとっての『ヒーロー』とは、『苦悩』の字が先にあった。
彼らは行動する前に悩み、凡そ『超人』とは云えないようなその姿に、僕は共感を、(後ろ向きな)『カッコよさ』を感じていた。
だが、ボーンは違った。ボーンは、悩まない。立ち止まる事は無い。
前作*1でボーンは任務に失敗し、それまでの人生を、記憶を失い、海原を漂っていた。残されたのは身に染み付いた人を殺めるための術のみ。
彼は不本意ながらその力を振るい、降りかかる火の粉を払いのけ、新しい人生を、愛を、手に入れた。


それから二年。地球の裏側での穏やかな生活は彼に安らぎを与えたが、彼の心を深く抉る傷跡を完全に治癒するまでには至らなかった。
そしてまた彼は全てを失った。安らぎを、新しい人生を、そして愛する人を。
今回彼は復讐の旅に出る。たった一枚の写真を残し、再び全てを0に帰して。
普通なら、お涙頂戴ドロドロベタベタの復讐劇が繰り広げられるところだ。
だけど、この「ボーン・スプレマシー」はそうはならない。湿っぽくならないところ、それがボーンの魅力だ。
ボーンは淡々と、『敵』を追い詰めていく。
時には自ら罠にかかり、敵をおびき寄せ、またある時には時刻表や地図等から逃走経路を確保したり。
彼の行動は知的で、無駄が無い。地味だけど、とてもカッコイイのだ。


このシリーズを見た事の無いあなたはボーンの事を冷徹なマシーンの様に思うかもしれない。
確かに彼は殺人マシーンとして訓練されている。
だが彼はその力を無闇に振るわない。ボーンはスパイアクションの主人公にも拘らず銃を殆ど使わない。
彼は一瞬で人を殺す術を知っているが、無益な殺しはしないし、したがらない。
まっさらだった彼を救ったのは愛だったからだ。そして彼はマリーの愛に応えるために、自らの能力を駆使して行動し続ける。立ち止まらずに。
だからこそ、電車の中で二人で撮った写真を眺める一瞬が、とてつもなく悲しく、カッコイイのだ。


とにかくシブいアクション好きはアイデンティティーから見れ!損はしない!カーチェイスヲタも見れ!