村上龍は冷たい

アタシ村上春樹のホンはあんまし好きになれません。
いや、初っ端から話が逸れました。
『69』読んだんです、積んでたのを。
いや、結構面白かったんですけどね?
一つだけ許せない事があるとすれば、この小説って『モテる奴』の理論で書かれてるんですよね。*1
村上センセーの本て他に読んだこと無いからあんまりエラそーなこと言えないんですけども、後書きで村上センセーはこう言ってるわけですね、『楽しんで生きない事は、罪だ』と。
確かに、そうだ。楽しくなければ生きていけない。辛い事ばかりの人生は嫌だ。それは事実だ。
だけど、人生を楽しく出来ない奴らは一杯居る。
精一杯やったにも拘らず面白くない青春を送る奴も居るだろう。
最初から全部諦めて何もしない奴も居るだろう。
そこそこになんかやって中途半端な快楽と退屈で満足する奴も居るだろう。
僕にはそんな頑張れない、報われない奴らを『楽しむ事を放棄した』と切り捨てる事は出来ない。


今と当時の状況が違うことなんて解っている。
村上龍が『楽しんで』生きない罪人としてぶった切ったのは当時彼らを締め付けていた教師や大人達だ。
多分その締め付けは今なんか比べ物になんないほど強くて、厳しいものだったのだろう。
だからこそ『69』の主人公達はロックに嵌まりこんだ。*2そこには確かに本当の意味でのロックンロールが成立する要素があった。
今は違う。反抗するものなんて何も無い。むしろ反抗する事はダサいとも思われてしま*3


僕らにとって許せないものが、反抗したくなるような何かがひとつあるとするならば、それは多分上手くやれない『自分自身』だ。
僕らは何もかも上手く行かない自分にイラつき、無気力になる。*4


これは多分モテる奴もモテない奴もそうだと思うんだけど、
そこでそのイラつきを他人と関わる事で誤魔化そうとする奴はモテるんだろう。
でも多くの人間はそこで立ち止まってしまう。女の子と話せない、男と猥談で盛り上がるしか出来ない。
そんな奴に出来る事と云ったら、オナニーするしかない。
しかも好きなオンナノコだと罪悪感がとか馬鹿な事言いはじめてグラビアやらAVやらを人目を憚りつつ買いに走る。*5


閑話休題。僕の高校生活は長い目で見ると楽しいものとは言えなかったと思う。*6
僕は楽しく生きる事が出来なかった。その一歩を踏み出すには怒りが必要だ。それは外に対するもので無ければいけない。
今はそんな時代じゃない。教師や大人に対する怒り等そうそう沸きおこったりはしない。今は一歩を踏み出すのがとても難しい時代なのだ。
だから、2004年に出た文庫版に冒頭のようなあとがきが載ってる事に僕は怒りを感じる。*7
『楽しんで生きない事は、罪だ』と言い切ってしまう事こそが、今は悪なのだ。そう思う。
だから僕は敢えて村上龍は敵だ、と言いたい。
『楽しんで生きる事が正しい、そうでない奴はポイだ』と、まるで脅迫するように迫ってくる世の風潮にシャイニングウィザードを叩きこんでやりたいと思う。

それが、僕の怒りだ。それが、僕の一歩だ。

*1:実際には主人公のケンはそんなにモテないんですけど、これが2005年のハナシだったら絶対ギシアンバコバコの筈だッ!(TД×;

*2:ロックだけじゃないけど

*3:かくいう俺も無駄にツッパッてる奴はダサいと思う

*4:峯田なんかその筆頭ですよ。無気力つうか気力を持て余してますけど

*5:僕にはそんな純粋に生きる事なんて出来ませんでしたけどね!女に振られていじいじうじうじでしたよ!

*6:付き合ってた女に振られて立ち直るのに1年半もかかったちうのがナニだわね。

*7:多分これは村上龍のせいじゃない。そんな事はわかりきっている